先日、京都国際会館で行われていた 紙博・布博 2019 に行ってきました!
布博とは手紙舎主催のイベントで布ものにまつわる作家さんの展示即売会です。作家本人がブースに立つことが多く、商品の詳しい説明やどのように作っているのかを聞きながら買うことができます。布フェチにはたまらないですね。
はじめに今までの布博のことをご紹介しておきます。
布博が初めて京都で開催されたのは2014年、廃校になった小学校を使っての開催でした。会場前に現地に着いたのにものすごい長蛇の列でなかなか会場に入れなかったのを覚えています。会場が廃校になった小学校ということもあり、レトロで手作りな感じの雰囲気が素敵でした。
その反面、教室ごとに作家の展示があり、教室をぐるぐる回ってみなければならずどこに何があるかもわかりにくかったです。お客さんの数が多すぎでレジの対応が追いつかず、ちょっと靴下ひとつ買うにも長時間ならばなければいけませんでした。
2015年からは会場をみやこめっせに移して、だいぶ見やすくわかりやすい展示になりました。年々お客さんは増加しているようで、布博の中のサブイベントの靴下パーラーやブローチ博には整理券をもらって時間制限されてやっと入場できるような競争率の高いイベントになっていきました。
それだけ人をひきつけるような魅力のある商品を展開している作家さんがたくさんいました。
毎年ときめきながら、ワクワクしながら、まさに『恋をするように』商品を手にとって眺めて、ため息をついては購入していました。そんないつまでも少女のような気持ちを持った方々が増え年々ヒートアップしているようでした。
そして今年2019年は紙博と布博同時開催になり、会場もみやこめっせから国際会館になりました。会場は大きくなりましたが、内容は紙博もあり、靴下パーラーやブローチ博もあり、ライブステージやワークショップもあり、と盛りだくさん!必然的に布博の作家さんの出店数は少なくなっていました。(すごい残念!)
私は最終日の午後2時半にやっと会場入りして閉場4時までの1時間半駆け足で主に布博・ブローチ博を見て回りました。
ここからやっと今回の感想です。
毎年新しい作家さんが出店していて、布を作っている作家さんはどんどん増えていっているような印象です。布博という”市場”があるからこそ始めた人もいるのかもしれません。
今回の私の注目作家さん一人目は
YURIHIMURO さん http://www.h-m-r.net/
2重織りのジャガード織物で縦糸のみ出ている部分をハサミで切ると別の模様が現れる!というとんでもなく斬新な生地を作っておられます。すっごい高度な技術を使ってしかできない、とんでもなく面白い発想をカタチにしておられます。
YURIHIMUROさんのことは前々からネットでは知ってましたが今回商品を見るのは初めて。とにかく見ていて楽しくて、生地を切って自分だけのものを作ってみたいと思わせる商品です。トリッキーでテキスタイルでこんなことできるのか!と打ちのめされたような、気持ち良く裏切られたような、そんな気持ちになりました。
YURIHIMURO さんの商品
もう二人目の注目作家さんは yatra(ヤトラ)さんhttps://www.instagram.com/yatra_noritakeapparel/
インドでブロックプリントで生地を作っておられます。洋服を作るのがメインのようです。ちょっとエスニックなテイストもありながら、ユーモラスな魚介類のデザインもあったり、図案のデザインが前に出てきてる訳ではないですが、生地から匂い立つ雰囲気がなんともエキゾチックで素敵です。
ってか、いやいやそんな簡単にインドでブロックプリントとかできないでしょ!!
ブロックプリントとは、インドの職人さんが一つ一つハンコのようにプリントして模様を作っていくんですが、遠い異文化での工場で意図したものをつくる事は本当に難しいことだと思いますが、なぜできちゃうんでしょうか?きっといろいろ大変な事があっただろうと勝手に思っておきます。
yatraさんの商品 この魚介類なんか惹かれる
最後に三人目八重樫茂子さん
https://www.instagram.com/yaegashisgk/?hl=ja
手織りで生地やストールを作ってらっしゃる作家さんです。散々プリントをやってきてもやっぱり織物が気になります。八重樫さんの作品は気をてらったところがなく、素直に使いやすくかわいい織物でした。
『工房を持ってらっしゃるんですか?』とお尋ねしたら、『工房というか、まあ自宅の1室6畳くらいの部屋でやってます』って!!!え!機織りって6畳でできるもの?まあ。そうか手機ならそうかも。。。と思って商品を眺めていたら、隣にきたお客さんが
『これは綜絖は?4枚くらいでやってるの?』って聞いてました!
綜絖(そうこう)ってわかります?機の部品で縦糸を通す道具です。この枚数が多いほど複雑な柄が織れます。
八重樫さんは『はい、そうです。4枚でやってます。京都の方は織物に詳しい方が多いから、いきなり綜絖は?とか聞かれるとちょっとびっくりします。』と答えてらっしゃいました。
そりゃそうだよね。いきなりそんな専門的な事きかれたらびっくりするよね。さすが京都!西陣の町の住人ですね。質問をされたお客さんは50代〜60代くらいの方で織物に関わるお仕事をされていたベテランさんだろうなあと思わせる方でした。
八重樫茂子さん
そうなんです。布博の特徴として、お客さんのレベルが高い!なんか雰囲気ある個性的な方がたくさんいます。きっと業界関係者も多いように思われます。そして以外と年齢層が高い。20代の方や、赤ちゃんを抱えた30代くらいの方もいますが、40〜60代と思われる方が一番多いように感じます。
前半にも書いたように私は布博が京都で開催されるようになってから、できるだけ見に行っていて、お気に入りの作家さんはその後SNS等で活動をチェックしています。初めて見た時はまだ柄数も少なく、本当に個人で細々とやっているような印象だった方が、どんどん作品数が増えるにつれ、企業にデザイン提供されたり、多方面で活躍されていて、テキスタイルデザイナーとして成長されている!と感じる事が多いです。例えば↓
YURIHIMURO さん familiar とコラボされています。
nocogou さん パンドラハウスというイオンの手芸屋さんのオリジナル生地のデザイン提供されています。
KAYO AOYAMAさん はnunocoto というベビー・キッズ向けの手芸用生地の販売サイトにデザイン提供されています。
見てるんだろうね。きっと。企業とはいえ担当者は人だからね。素敵なデザインや商品を作ってらっしゃる方を探しにきてる方もいるんだろうな。もはや布博はテキスタイルデザイナー自身を売り込むマーケットでもあるんだろうな。
そして目の肥えたお客さんはデザインだけでなく、布の質感・素材感や手触りや作家の背景も含めて商品と一緒にそのストーリーを持ち帰っているようです。
最終日の夕方に行ったせいもあると思うが、もうすっかりメジャーになってしまった『点と線模様製作所』や、『nani IRO』 や、『tamaki niime』さんのブースはそこまで混んでなかったです。きっともうみんな知ってるし、商品も持ってるし、ネットでも買えるのを知っているんですね。
そいうったメジャーどころより、堂々と『ネット販売していません!』と書いていた『salvia』のブースには常にお客さんがいました。
希少性とかここでしか買えない、体験できない事に価値を見出しているんですね。モノが溢れかえってネットでどこにいてもなんでも買えてしまう時代だからこそ、『体験』とか『ここにしかない』という事の価値が高まってきているんでしょうね。
いやはや布博は出店作家ももちろん注目ですが、来場されるお客さんの動向も要チェックです。みんな何を求めて集まってくるのか、何には興味ないのか、どこにどんな価値を見出してるのか、等々考えさせられるイベントです。今後も要チェックですね。